猩々木と苺
「真っ赤なおっはーなのートナカイさーんーはー…」
テレビから聞こえるのは、安っぽいアイドルが歌うクリスマスソング。
机には、小さなツリーとポインセチアが並べられていた。それから苺のショートケーキと、シャンパンも。
「今年で…3回目だっけ?独り身どうしのクリスマスって。」
「独り身『どうし』じゃないじゃん、お前彼氏いるんだから」
オレのつぶやきに聡がすかさずツッコミを入れた。
「まぁ、そうなんだけど、彼氏出来てまでクリスマスをお前とまた過ごすとはなー…」
「お前の彼氏って、仕事夕方までじゃなかったの?」
「残業。いつ終わるか分かんないって。
でもまぁ、仕方ないし、いいんだよ。それに…」
言いかけた言葉を途中で呑み込んで、止めた。
「え?」
「…いや、何でもない。
あ、ホラ、始まったよクリスマス特番。」
そうやって話をそらして、しばらく2人で大して盛り上がらないテレビ番組を見ていた。
しばらくして、ソファーに座っていた聡は、いつの間にか寝息を立てていた。
「…風邪ひくってば。」
とりあえず聡に毛布をかけてやってから、椅子に腰掛ける。
相変わらず面白くもないテレビをぼーっと眺めながら、さっき食べかけていたケーキの苺をフォークで刺した。
真っ赤に熟れた苺と、机の上のポインセチア。
「…赤いもんばっかり」
少しだけ振り向いて、さっき言いかけた言葉の続きを言う。
「それに…
ホントは、お前といる方がいいんだよ。
聡の方が……。」
少しだけかじった苺が、なんだか、すごく酸っぱかった。
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